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9908岩手県保険医新聞に掲載 |
| 昔、米英両軍が合同演習の折り、コーヒー派の米軍と紅茶派の英軍とで、
朝一番の演習開始・臨戦態勢への所要時間に大きな差があったという話はつとに有名だ。朝の一杯、昼の一杯、三時過ぎの一杯は頭をスッキリさせるのにどんな薬より優る。またコーヒーには利尿作用があることは皆さんもよくご承知のこと。五〇歳のこの年になると尿の勢いというものも妙に気に掛かるもの。水分代謝が活発であれば一日心地よく過ごすことが出来る。いずれもカフェインのなせる技であろう。 僕とコーヒーはもう二〇年近く前から切っても切れない縁になっている。コーヒーは初めに香り、次に味、最後に気合いの充実と三回楽しめる。ことにも朝起き掛けの一杯のコーヒーは僕の日課となっている。味の違いが分かるほど舌が肥えてはいないので、家で味わう場合ブレンドや銘柄にこだわるということはないが、あえていうならＵで始まるアルファベット三文字の会社のものがあたりはずれがなく、全般にまじめな作りをしている感じがして好きだ。 さらにコーヒーの出がらしも捨てずに乾燥させれば立派な消臭剤となる。灰皿に入れておいてタバコの吸いかけを差し込めば一瞬で消すことができ、喫煙後の余分な煙やヤニのにおいが居間に充満しないのが気に入っている。 最後に気をつけている点として、手術の前にコーヒーをいただくのは絶対厳禁であるということ。眼科の手術はそれこそ０．１ミリの勝負の世界であるから、肉眼では気づかない程度の細かなふるえも手術操作に大きく影響する。午前のはじめの診察時にも睫毛抜去の患者さんが来ると朝のコーヒーの影響が残っているので抜くのに一苦労するが、これは慎重にやりさえすれば眼を傷つけることはなく、多少時間が掛かる程度ですんでいる。 |